MUTOY島旅行記　パール街～アダマンチウム街

ここは潮風の香る真珠のような街、パール街。
街を賑わしていたバレンタイン週間も終わり、周りの店主たちの売れ残りを処分しているのを眺めながら、私はふと、旅に出たいと思うようになった。

この街の人々は、本当に良い人ばかりだ。陸を歩く変な生物がいたり、美少女がやたら多かったり、他の街から取引をしに来る人がいたりと活発であり、街の憩いの場にはいつだって人がいる。だが、私はこの街に居ついた頃から殆ど出たことが無く、外の世界も井戸から聞こえてくる噂話でしか聞いたことが無い。そう思ったら、居てもたってもいられなくなってしまった。
MUTOY島は一日で島の端から端まで行けるほど狭いが、その分実に様々な種類の物品を生産されている。特に、街によっては特産物として、宝石や特定の生物が発掘されたり捕まえられたりするらしく、今の私のようにその為にわざわざ移住して作業をするような人も多数いるらしい。かく言う私も、初めはそうやって清水を汲みにパール街までわざわざ来たという過去がある。

急いで倉庫を整理し、駆け出し店舗の設計図をごっそりと買い漁る。保管庫から溢れかえった材料や道具を抱えながら泣いている倉庫妖精には申し訳ないが、暫くはそのまま預かっていてもらうことになりそうだ。
店で売っていたものや、パールの店主たちに餞別として譲ってもらったレシピ品を荷車に乗せ、私と従業員の妖精たちは南へと歩を進める。初めの目的地はアダマンチウム街だ。

実は、旅をするなら初めはこの街からにしよう、という風には決めていた。パール街の養蜂家には日ごろからお世話になっていたのだが、そのハチミツを作るために必要なハチの木箱に、シャープな金属である"アダマンチウム"が必要だという事をある店主と話していたのだ。
アダマンチウム街以外では殆ど採れないアダマンチウム原石は、市場価格が安定しない。「いつかきっと直接アダマンチウム原石を卸しますよ」なんて言ったまま、叶えられていなかったことが心残りであった。

ここは、灼熱と寒冷の街、アダマンチウム街。
街を十字に走る道沿いに進むと、その気候の極端さに驚く。北の方はツンドラを始めとした寒冷気候に覆われ、逆に南側は溶岩と、それに焼かれた焦土が広がっている。そんな中でも商売をしている店がちらほらと見えるが、あれでお客さんはいるのだろうか？
とりあえず私は鉱山へと向かうため、雪の降りしきる土地へと店舗を構えた。
早速作業妖精たちを率いて、近くの鉱山へと向かう。地図と道具はしっかりと準備してきたので、長い期間の作業でも十分に足りる量があるはずだ。

彼女達には（もっとも妖精に性別があるかは謎だが）ブルー街にいた時に、ブルーダイヤ原石を掘ってもらっていた。久々の鉱山での作業に腕が鳴るのか、カーン、カーンと心地の良いリズムでそれぞれがカッパーマトックを振るっているようだ。
適当な時間で帰ってくるように言いつけ、私は街の憩いの場に挨拶をしに行くことにした。ちらほらといる店主たちに挨拶をして、記念にとパールで私が収穫した宝石貝を持ち出したが、案外人気では無かったらしく、そのまま持ち帰る事になってしまった。寄合所ではブラッディウムの装備を宣伝している人もいたので、そういった装備品が流行っているのかもしれない。

アダマンチウム原石を始めとして、貴重な鉱石類は慎重に掘らないといけないため、一回ずつの作業にとにかく時間がかかる。2日ほど店番をしたり、輸送妖精と踊ったりしていたら、ようやく作業妖精たちが荷車を引いて帰ってきた。
初めての作業の結果は合計300㎏程。目標としていた2トンまではまだまだあるが、かなりの量である。彼女たちを休ませ、次のシフトの妖精たちを繰り出させる。破損してしまった分も含めると思ったより地図の消費は激しいらしく、贔屓にさせていただいているパールの地図屋だけではなく、市場からもかき集める必要がありそうだ。

そうして、1週間も経った頃には1トンを超え、余分にアダマンチウム原石も手に入ってきた。
パールの木工士の元から来た輸送妖精に頼まれた分を預け、最後の作業妖精からのアダマンチウム原石も受け取って、次の街へと向かう準備が出来た。
この街ではそこそこ他の店主たちと交流が出来たが、初めての街という事もあり、あまり積極的にかかわる事が出来なかった。次の街ではもっと顔を出すことが出来るのだろうか。
次に目標とする都市はガーネット街。様々な地形が集まった、島の中心に近い都会である。
荷車を引く私の耳に、遠くからカーン、カーンという音が聞こえる。今日もどこかで鉱夫が鉱山にこもっているらしい。

続く。

今行っているMU島一周旅行を、旅行記という形で書き物にしてみようと思いました。
始めの方の都市は思い出しながらなので、細かいところが間違っていたり現在の情報と違っていたりするかもしれませんが、ご了承ください。
不定期更新していくつもりです、よろしくお願いします。